昨年2020年6月に発売されたセマグルチド(商品名:オゼンピック®)ですが、発売1年が経過する2021年6月1日、ついについに長期の処方が解禁されます!
今後主治医の先生からオゼンピックを勧められる方が確実に増えます。
そんなみなさんに向けて、オゼンピックの効果・特徴につき糖尿病専門医が分かりやすく解説します!
- オゼンピックの特徴を理解できる
- 他の薬剤(DPP-4阻害剤・ビクトーザ・トルリシティ)との比較ができる
- オゼンピックの注意点が理解できる
筆者はオゼンピックに大変期待しています!
それでは早速解説です!
オゼンピックについて
商品名 | オゼンピック® |
一般名 | セマグルチド |
規格 | 0.25mg・0.5mg・1.0mg(週1回製剤) |
適応症 | 2型糖尿病 |
用法用量 | 開始量0.25mg 維持量0.5mg 治療強化量1.0mg |
半減期 | 145時間(0.5mgの場合) |
薬価 | 1547・3094・6188円(10割負担の場合) |
ポイント
・1 回使いきりです。
・注射針の取り付けは不要です。
・投与量の設定は不要です。
・0.25mg/週で開始、4週間経って副作用がなければ0.5mgへ増量します。
・効果をみて1.0mgへの増量を検討します。
オゼンピックはGLP-1受容体作動薬と呼ばれる薬の1つです。
GLP-1とは小腸から分泌される消化管ホルモン(Glucagon-like peptide-1)の略ですが、膵臓に作用しインスリンを分泌させる働きを持ちます。
週1回、決められた曜日(時間はいつでもOK)に打つ注射薬です。
後述の通り減量効果が高く食欲を抑える作用がある為、肥満の2型糖尿病患者さんに最適な薬と考えます。
オゼンピックの取り扱い
オゼンピックの注射方法と管理方法につき説明します
オゼンピックの注射方法
Step1 ペンのキャップを外します
• キャップをまっすぐ引っ張ってはずします。
Step2 注射
・確認窓が隠れないようにペンをしっかりと 持ち、まっすぐ皮膚に押し当ててください。
・注射が開始されます。
・黄色マーカーが下がり止まるまでペンを皮膚にしっかりと押し当て続けてください。
・黄色マーカーが止まったら、ペンをゆっくり持ち上げ、皮膚から離してください。
・注入時間はおよそ5~10秒です。
オゼンピックを打ち忘れた場合と保管方法
次の投与予定日まで2日(48時間)以上の場合
気づいた時点で直ちに1回分を投与し、
その後はあらかじめ決められた曜日に投与
次の投与予定日まで2日(48時間)未満の場合
忘れた分は投与せず、
次の投与予定日に1回分を投与
同じ週1回のGLP-1作動薬のトルリシティを打ち忘れた場合は、次の投与予定日まで3日間以上であれば投与可、3日間未満なら1回分スキップとなっています。
オゼンピックは2日、トルリシティは3日…
打ち忘れたときの日数が微妙に違うんだね。
保管に関しては、使用前は、個装箱などにより遮光し、凍結を避け、冷蔵庫(2~8℃)に保管してください。
オゼンピックを処方されたときは、ご帰宅後速やかに冷蔵庫に保管してください。
万一、凍結した場合は(もったいないけど)使用しないでください。
オゼンピックの効果
前置きはここまで。オゼンピックの驚異的な効果を紹介します!
オゼンピック vs シタグリプチン
【SUSTAIN JAPAN】
対象 | 2型糖尿病患者(日本人100%) |
薬剤 | オゼンピック:0.5mg 1.0mg |
比較対象 | シタグリプチン:100mg (商品名:ジャヌビア・グラクティブ) |
この試験のポイント
日本人の2型糖尿病を対象にした試験であるという点です。
市販で現在一番使用されるDPP-4阻害剤の中でも最古参のシタグリプチンと比較しています。
オゼンピック(シタグリプチン)のみの単独効果を評価しています。
(左)シタグリプチンと比較してオゼンピックのHbA1c改善効果は約-2%と非常に高い結果になりました!飲み薬だと平均約-0.8%くらいですので、約-2%の改善というのは非常にインパクトが大きいと思います!
(右)体重を落とす効果も-2~4kgと非常に強力です!
【結論】オゼンピックの圧倒的勝利!
オゼンピック vs トルリシティ
【SUSTAIN7】
GLP-1作動薬の中で同じく週1回の注射にトルリシティがあります。
この薬から切替を提案される方もいると思います。
次はトルリシティとのガチンコ勝負です!
対象 | 2型糖尿病患者(18歳以上 アジア人13-18%) メトホルミン(糖尿病薬の1種類)1500mg以上服用 |
薬剤 | オゼンピック:0.5mg・1.0mg |
比較対象 | トルリシティ:0.75mg・1.5mg |
この試験のポイント
オゼンピックvsトルリシティのガチンコ勝負です。
薬価で考えればオゼンピック0.5mg対トルリシティ0.75mgとの勝負になります。。
(※試験は日本人糖尿病患者に対する研究ではないので結果の解釈には注意が必要です)
HbA1c改善度・体重減少度ともにオゼンピック>トルリシティとの結果になりました。
【結論】オゼンピックの勝利!
オゼンピック vs ビクトーザ
【SUSTAIN10】
GLP-1受容体作動薬の中でトルリシティ以外にも毎日1回打つタイプのビクトーザもこれまでよく使用されてきました。
この薬から切替を提案される方も多いと思います。
次はビクトーザとのガチンコ勝負です!
対象 | 2型糖尿病患者 (92%が白人 元々1-3種類の飲み薬を服用中) |
薬剤 | オゼンピック:1.0mg |
比較対象 | ビクトーザ:1.2mg/日 |
この試験のポイント
この試験ではオゼンピック1.0mg/週vsビクトーザ1.2mg/日の一対一の対決です
対象のほとんどが白人であり、通常日本で使用される量のおおよそ倍量使用されています。
ビクトーザだと12週で下がり止まり、その後上昇する傾向があります(所謂ナイキカーブ)。
このナイキカーブ傾向は多くの糖尿病薬で認められる現象です。
興味深いことにオゼンピックではナイキカーブ現象がなく持続的に低下しています。
【結論】オゼンピックの勝利
オゼンピックの減量効果
SUSTAIN1~5の減量効果をまとめたものです。(ただ日本人を対象とした試験ではないので注意が必要)
オゼンピック1.0㎎の投与で平均5~6㎏減っています。
オゼンピックの問題点
ここまで聞くとオゼンピック最強!ってなりますが、盲目的に信じてはいけません。
次はオゼンピックの最大の問題点です!
オゼンピックは胃腸障害が出やすい!?
GLP-1受容体作動薬は膵ぞう以外にも胃腸にも作用するため、胃腸障害の副作用がもともと出やすい薬です。
オゼンピックはこの副作用が特に出現しやすい薬であると印象をもっています。
先程紹介した勝負においてどれくらいの割合で出現したか包み隠さずに紹介します。
オゼンピック0.5mg | オゼンピック1.0mg | シタグリプチン100mg | |
胃腸障害(全体) | 37.9 | 41.2 | 16.5 % |
悪心 | 10.7 | 12.7 | 0 |
下痢 | 6.8 | 8.8 | 1.9 |
便秘 | 14.6 | 11.8 | 3.9 |
腹痛 | 3.9 | 6.9 | 0 |
上図のように約4割の方に何かしらの胃腸障害を呈します。
飲み薬(シタグリプチン)と比べてもその差は歴然としています。
オゼンピックの胃腸障害はかなり多いんだね
オゼンピック0.5mg | トルリシティ0.75mg | オゼンピック1.0mg | トルリシティ1.5mg | |
胃腸障害(全体) | 43 | 33 | 44 | 48 |
悪心 | 23 | 13 | 21 | 20 |
下痢 | 14 | 8 | 14 | 18 |
嘔吐 | 10 | 4 | 10 | 10 |
食欲低下 | 8 | 3 | 9 | 10 |
便秘 | 5 | 3 | 5 | 5 |
やはりGLP-1受容体作動薬はどちらも胃腸障害が出やすい薬です。
通常使用するのはオゼンピック0.5mgとトルリシティ0.75mgです。
この両者の比較でいくとオゼンピックのが胃腸障害が出やすいとの結果でした。
やっぱりオゼンピックのが出やすい
オゼンピック1.0mg | ビクトーザ1.2mg | |
胃腸障害(全体) | 43.9 | 38.3 |
悪心 | 21.8 | 15.7 |
下痢 | 15.6 | 12.2 |
嘔吐 | 10.4 | 8.0 |
便秘 | 5.9 | 3.5 |
腹痛 | 5.2 | 2.1 |
こちらもオゼンピックのが出やすい
胃腸障害の出現する時期はいつ?
副作用については、投与早期から出現し、その後やや下がるものの試験終了まで副作用は継続して出現します。
糖尿病治療薬は長期に継続が大切です。
日常生活に影響が出るレベルであれば早めに中止すべきです。
許容できる程度なら、非常に良い薬なので是非続けたいですね!
インスリンの出が悪い人は効かない!?
膵ぞうが弱っている場合には、オゼンピックの効果が出づらいと考えられています。
その場合はインスリン治療のがいいんですか?
確かにインスリンのが有効かもしれませんが、インスリンと一緒に併用することも有効な手段と考えられています。
インスリンとGLP-1受容体作動薬の2つの混合剤も実はあるんです。
それは別の機会に紹介します!
まとめ
オゼンピックのまとめ
・2021年6月1日に長期処方がついに解禁
・強力なHbA1c改善効果、体重減少効果あり
・既存の飲み薬、他のGLP-1受容体作動薬と比べて効果強し
・胃腸障害(なんと約4割)には要注意!
・胃腸障害が許容できる方は非常に有効な薬剤です
2021年6月1日にオゼンピックの長期処方が解禁され、この薬剤を担当医からすすめられる方が確実に増えると思います。
この投稿が、あなたの判断の助けになると嬉しいです。
当院「糖尿病・甲状腺 加木屋たけうち内科」でも、積極的に新しい治療を取り入れて、皆さんの糖尿病ライフをより豊かなものにしていきたいと思っています。
2021年度に愛知県東海市で開院予定です。よろしくお願いします!
コメント
コメント一覧 (2件)
初めて投稿致します。私は糖尿病で、主治医は、オゼンピックの副作用を胃腸の働きがゆっくりになるとしか言わなかったので、いろんな症状が出たけど(便秘、下腹部痛、背中痛、めまい)その都度言いましたが、説明がなく、結局は、大腸カメラ、子宮頸がん体癌、尿道と膀胱のカメラ、肺のCTなど、検査して異常なしで、訳がわからず、他に悪いところがあるのか、心配でたまりませんでした。
副作用だと分かったのが、薬剤師さんに聞いてから、全て、オゼンピック1mgのせいと分かり、0.25や、0.5に変えて欲しいと頼み、やっと症状がすこし収まりました。
薬剤師さんに、便秘の人沢山いらっしゃって、止める人多いですよと聞いて、もっと早く説明してもらったら、毎回便秘で1時間もトイレの中で苦しまなくて良かったのに。背中も、ずっと痛い思いしてきたのに。
と、思い、先生に言ったら、胃腸の働きがゆっくりになると言ったでしょ。と言われて、人の話を聞いてないと怒られました。最初の使う前に一回言われただけです。何で、それ言われて、背中痛いとか、便秘とか、下半身の鈍痛とか、素人のおばさんが結びつくはずないでしょう❓でも、オゼンピック使い始めてから、いろいろ出てきたので、先生には、2週間毎に言ってるから、私が、その時、副作用ですかって聞いたら、聞いておきます。と言ったっきりでした。
先生は副作用を隠しているとしか、考えられません。一言、オゼンピックの副作用と正直に言って、安心させて欲しかったわ。
もう、検査代だけでも、大金が飛んで行きました。
この先生、信用していいのでしょうか?
血糖コントロールも出来てなくて、神経障害が起こってきましたが、血糖スパイクになってることも知らなかったし、足の指の神経障害が起こって、ネットで調べて、初めて血糖スパイクと言う言葉も知りました。
このまま、このクリニックに通うか、クリニックを変えるか、迷っています。
アドバイス宜しくお願い致します。
ブログ記事の拝聴、そしてコメントまで頂き、大変嬉しく思います。
お辛い日々が続いた事、とても大変でしたね。
記事にも触れた通り、オゼンピックは非常に血糖改善作用が強く、体重低下作用も高い薬剤で非常に期待が持てるお薬なのですが、胃腸の不調が高頻度に出現するお薬です。
特に1.0mgの製剤はその副作用がより顕著に出る方も多い印象を持ちます。
匿名希望さんの症状(便秘・下腹部痛)等はそれに該当しますし、薬を減量してその症状が緩和されたようですので、やはり副作用の可能性が高いと考えます。
通院なさっている医療機関の担当医の先生は糖尿病診療に長けた先生でしょうか?
日本糖尿病学会認定の糖尿病専門医の資格をお持ちでしたら、副作用については当然に把握してこのお薬を使用します。
また新薬は発売されて1年間は国から2週間処方の制限が課されます。これは副作用の確認を慎重に行う必要がある為です。
私はこれまでの治療の経過や、その他の病気のことなど細かい事情を知らない立場です。
クリニックを変えるべきかとの質問に関しては、無責任にお答えは出来かねます、ご容赦ください。
ただ一般にオゼンピックなどの注射製剤に関しては糖尿病専門医による調整をお奨めします。
以下に専門医の検索ページを添付いたします。日本糖尿病学会が、公式に作成しているものですので、ご安心ください。
かかりつけの医療機関、また近隣の医療機関を一度検索してみてはいかがでしょうか?
http://www.jds.or.jp/modules/senmoni/
匿名希望様が、今後うまく糖尿病とつきあっていけるよう、心から期待しております。