マンジャロ/ゼップバウンドは継続が大事!?【糖尿病専門医が解説する最新の知見】

近年、大幅な体重減少効果を持つ糖尿病/肥満症治療薬チルゼパチド(商品名マンジャロ or ゼップバウンド) が注目されています。
この薬は大幅な血糖改善効果の他、食欲抑制・代謝改善・脂肪燃焼促進 など多方面から体重減少をサポートし、臨床試験でも 20%以上の体重減少 を達成しています。

しかし、「体重が減った後に薬をやめてもよいのか?」 という疑問を持つ方も多いでしょう。
本記事では、最新の研究結果(SURMOUNT-4試験)をもとに、チルゼパチドの継続の重要性を専門的に解説 します。

こう蝶さん

マンジャロをはじめて血糖値・体重もとっても良くなったけど、辞めては駄目かしら?

院長

皆さんから良く質問される質問です。
早速解説していきますね♬


目次

チルゼパチドとは?

チルゼパチドGLP-1受容体作動薬とGIP受容体作動薬の二重作用を持つ薬 で、週1回の皮下注射 で効果を発揮します。

スイゾーちゃん

糖尿病治療薬のマンジャロ=肥満症治療薬として承認されたゼップバウンド
どちらも今回紹介するチルゼパチドだよ。

チルゼパチドの主な減量作用

  1. インスリン分泌を促進し、糖代謝を改善エネルギー効率を最適化
  2. 視床下部の食欲抑制中枢を刺激食欲を低下させる
  3. 胃排出を遅延させる食後の満腹感を長く維持
  4. 脂肪分解を促進体脂肪の減少

この薬は、肥満症の治療薬として 米国(FDA)および英国(MHRA) で承認され、日本でも糖尿病治療薬(マンジャロ)として使用されています。また肥満症治療薬(ゼップバウンド)も日本で承認されて今後発売される予定です。


チルゼパチドを中止するとどうなるのか?

最新の SURMOUNT-4試験(JAMA, 2024)では、チルゼパチドを中止すると体重が急速に再増加する ことが示されました。

SURMOUNT-4試験の概要

対象者

BMI 30以上 または 27以上で肥満関連合併症を持つ成人(糖尿病は除く)

試験デザイン
36週間:全員がチルゼパチド(10mgまたは15mg)を投与
その後、52週間
 チルゼパチド継続群(n=335)
 プラセボ(中止)群(n=335)

院長

この試験では糖尿病を除く肥満症患者さんが対象です。

試験結果

グループ体重変化(36週→88週)
チルゼパチド継続群-5.5%(さらに減少)
プラセボ(中止)群+14.0%(急速なリバウンド)
群間差-19.4%(P < 0.001)
試験結果

また、体重減少の維持率(80%以上の減量を維持できた人の割合) を比較すると、

  • 継続群は89.5%が維持
  • 中止群は16.6%のみ維持

この結果は 「チルゼパチドの中止がリバウンドを引き起こす」 ことを明確に示しています。


なぜチルゼパチドをやめると体重が戻るのか?

肥満は単なる「カロリー過多」の問題ではなく、慢性的な代謝疾患 であるため、薬をやめると生理的に体重が戻る現象が起こります

① 食欲が元に戻る

チルゼパチドは 脳内の食欲抑制ホルモン(GLP-1, GIP)を活性化 しますが、中止するとこの作用がなくなり、
「以前のように食べたい」という強い欲求 が再び現れます。

② エネルギー消費が低下

  • 体重が減ると、基礎代謝が低下 するため、薬のサポートなしでは消費カロリーが減少
  • 運動量が変わらなくても、エネルギーバランスが崩れやすくなる

③ 体脂肪の蓄積が進む

  • 減量後の体は「飢餓状態」と認識 し、少しのカロリーでも脂肪を溜め込もうとする
  • インスリン感受性が低下し、脂肪が燃えにくくなる

このように、チルゼパチドを中止すると「薬による体重減少効果が逆転」し、リバウンドが起こる のです。


肥満症治療は継続が大事!?

高血圧や糖尿病と同じく、肥満も「慢性疾患」であり、長期的な治療が必要 です。

治療の継続が推奨される理由

  • 糖尿病や高血圧と同じく、治療をやめると元に戻りやすい
  • チルゼパチドは単なる「ダイエット薬」ではなく、肥満という病態をコントロールする薬
  • 減量後のリバウンドを防ぐために、長期的な薬物療法が有効

したがって、体重減少に成功した後も、医師と相談しながら継続的な治療戦略を立てることが重要 です。


チルゼパチドの継続治療を成功させるために

① 継続使用を基本とする

現時点では、長期間の使用が最も有効な方法 であると考えられます。
途中での自己判断による中止は、リバウンドを引き起こす可能性が高いため、医師と相談しながら継続することが重要 です。

② 生活習慣の改善を並行する

  • 高タンパク質・低カロリーの食事を意識する
  • 定期的な運動(特に筋トレ)を取り入れ、基礎代謝を維持
  • 食事と運動の習慣を作り、薬なしでも体重を維持できる状態を目指す

③ 減薬をする場合は段階的に

完全に中止するのではなく、徐々に減量する方法(漸減療法) をとることで、リバウンドのリスクを軽減できます。


まとめ

  • チルゼパチドを中止すると体重が急速に戻る
  • 肥満は慢性疾患であり、高血圧・糖尿病と同じように長期的な管理が必要
  • 体重減少後も治療を継続することで、リバウンドを防ぎ、健康的な体を維持できる

「痩せるための薬」ではなく「痩せた状態を維持するための薬」としての継続使用が鍵となります。
今後の肥満治療の方針として、長期的な戦略を立てることが重要 です。

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この記事を書いた人

\対話を重ねて「100人100通」のベストチョイスを紡ぎ、あなたと笑顔を交わしたい/
予防医療に力を入れています!

愛知県在住
加木屋たけうち内科 院長
医学博士
糖尿病/内分泌代謝科/総合内科専門医

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